海外FXの税金は高いからと、利用を躊躇してしまう方もいるでしょう。しかし海外FXの税金は、ある一定金額までは国内FXよりも税率が低くなります。今回は、海外FXの税金が高いといわれる理由や国内FXとの違い、税金の計算方法などを解説します。
上手な節税方法なども併せて解説しているので、参考にしてください。
海外FXの税金は高い?国内FXとの違いを解説
海外FXの税金が高いといわれる理由はどこにあるのでしょうか。ここでは、海外FXと国内FXの違いを解説し、税金が高いといわれる理由を深堀していきます。
税率の違い
海外FXと国内FXでは、利益にかかる税率が異なります。一般的に海外FXの税率は高いといわれていますが、利益の額によっては、国内FXよりも税率が低くなるケースもあります。 海外FXと国内FXの税率の違いをそれぞれ見ていきましょう。
海外FX:累進課税で15~55%
海外FXの税金は、累進課税方式を採用しています。
累進課税方式とは、利益が増えれば増えるほど税率も高くなっていくものです。
海外FXの税金は以下の表のように、利益によって税率や控除額が決まります。
FXの利益 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万~329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万~899万9,000円 | 23% | 63万6000円 |
900万~1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
海外FXの税金は上記の表の所得税率に、住民税10%と復興特別所得税2.1%がかかります。すべて合算すると15〜55%になる計算です。
ちなみに復興特別所得税とは、復興のために必要な財力を確保するための税金で、2013年から課税されています。2037年まで支払いの義務があるため、併せて覚えておきましょう。
国内FX:一律で20.315%
国内FXの税率は、一律で20.315%課税されます。これはどれだけ利益が少なくても、多くても変わらない税率です。
海外FXは利益によって税率が多くなってしまうため、国内FXの税金のほうが安く感じる方もいるでしょう。しかし海外FXで利益が195万円以下の場合は、かかる税率が17.7%と国内FXの税金よりも安くなっています。
課税方法の違い
海外FXと国内FXは、課税方法にも違いがあります。それぞれの課税方法について解説するので、参考にしてください。
海外FX:他の所得と合算できる「総合課税」
海外FXでは、他の所得と合算できる総合課税を採用しています。
国内FX:個別の利益として課税される「申告分離課税」
給料で得た金額と国内FXで得た利益は、それぞれ別々に課税所得を計算します。
海外FXの税金が発生するタイミング
海外FXの税金が発生するタイミングは、年末の12月31日です。海外FXでは、年間の合計利益に対して税金がかかり、利益が出るたびに税金が発生するのではありません。
海外FXを決算して利益が出たタイミングでは、まだ税金が発生しないのが特徴です。
海外FXはいくら利益が出ると税金が発生する?
海外FXは、いくら利益が出ると税金が発生するのでしょうか。会社員や個人事業主など、雇用形態によって金額が異なるため、よく確認しておきましょう。
会社員・アルバイトなどの給与所得者は「年間所得20万円以上」
会社員やアルバイトなどの給与所得者は、給与以外の所得が年間20万円以上の利益を得た場合、課税対象となります。海外FXの利益が20万円を超える場合や、海外FXと副業などの利益を合わせて年間20万円以上の所得がある場合は確定申告が必要です。
個人事業主・専業主婦・無職は「年間所得48万円以上」
個人事業主や専業主婦、無職の人が年間所得48万円以上になった場合は、課税の対象となります。事業所得などを含めて年間所得が48万円以上になった場合は、確定申告が必要です。
所得が少なくても「住民税」の申告は必要
会社員や個人事業主など、年間所得が上記の基準以下だった場合でも、住民税の申告は必要です。上記の基準は所得税の課税対象を決めるものなので、住民税は1円でも利益があった場合は申告が必要になります。
住民税の申告は、住まいの市区町村の窓口で申請が可能です。しかし個人事業主が個人で確定申告をおこなっている場合は、別途住民税の申告をする必要はありません。
【シミュレーション】海外FXにかかる税金の計算方法
海外FXにかかる税金をシミュレーションしてみましょう。
たとえば、無職の人が海外FXのみで100万円の利益があった場合、所得税5%・住民税10%・復興特別所得税2.1%の合計17.1%がかかります。100万円×17.1%で、合計17万1,000円の税金がかかる計算です。
また、会社員が海外FXで利益を得た際の計算方法も見ていきましょう。
給与所得が400万円で海外FXの利益が100万円だった場合、合計所得は500万円になります。かかる税金は、所得税20%(控除額42万7,500円)・住民税10%・復興特別所得税2.1%です。
所得税は控除額を差し引いて57万2,500円、住民税は50万円、復興特別所得税は1万2,022円となり、108万4,522円の税金がかかる計算になります。
海外FXにかかる税金を節約するには?
海外FXにかかる税金は、できる限り節約したいものです。ここでは、海外FXに関する節税方法を解説します。
手元に残る利益を多くするためにも、ぜひ参考にしてみてください。
海外FXにかかった費用を経費として計上する
海外FXで節税するには、かかった費用を経費として計上するのがおすすめです。海外FXの課税対象になるのは、利益を含む総収入額から必要経費を引いた額になります。
経費が多ければ、その分課税対象となる総収入額は低くなるため、税金も少なくなる計算です。経費の判断はあいまいな部分が多いですが、以下のような海外FXの利益を得るために必要なお金は経費として計上できます。
- 取引に使うパソコンやスマートフォン代
- FXに関する書籍代やセミナー代
- インターネット通信費
- トレードする部屋の家賃や光熱費
副業収入の損失と相殺する
海外FXは総合課税のため、副業などのその他の収入と損益の合算ができます。たとえば海外FXで200万円の利益を出し、副業で100万円の損失を出していた場合は、利益の200万円から損失の100万円を引いた100万円を所得として計上できます。
所得控除を利用する
海外FXにかかる税金を節税するなら、所得控除を利用するのもよいでしょう。所得控除を利用することで、かなりの額の所得を抑えられます。
確定申告で使える所得控除は以下のとおりです。
- 基礎控除:2,500万円以下の所得なら最大48万円
- 扶養控除:扶養親族に応じた額
- 配偶者控除:配偶者の所得が48万円以下の場合
- 配偶者特別控除:配偶者の所得が48~133万円以下の場合
- 社会保険料控除:社会保険料の全額
- 医療費控除:支払った医療費が10万円以上の場合
- 雑損控除:災害・盗難・横領などの損害額から一定額
- 小規模企業共済等掛金控除:掛け金の全額
- 生命保険料控除:保険料に応じた一定額
- 地震保険料控除:保険料に応じた一定額
- 寡婦控除:寡婦の場合27万円
- 障害者控除:障害区分に応じた一定額
- 寄付金控除:特定寄付金を支払った場合(ふるさと納税など)
海外FXの利益を確定申告する方法
海外FXの利益を確定申告する方法を解説します。確定申告前に焦らないように、事前に確認しておきましょう。
海外FXの利益を確定申告する際には、まず必要な書類を用意しておきます。
確定申告に必要な書類は以下のとおりです。
- 海外FXの年間取引報告書
- マイナンバーカード
- 経費のレシート
- 源泉徴収票(給与所得者)
- 医療費・保険料の控除証明書
海外FXの年間取引報告書は、FX業者の取引プラットホームからダウンロードできます。また、このあと確定申告書の作成に進んでいきますが、確定申告には青色申告と白色申告があります。青色申告のほうが控除額が大きいですが、記入がやや複雑なのが難点です。対象者も限られているため、該当しない場合や初心者は記載内容がシンプルな白色申告を選択しましょう。
必要な書類を準備できたら、国税庁のホームページから、「確定申告作成コーナー」へアクセスします。
「マイナンバー方式」「ID・パスワード方式」「印刷して提出」のなかから作成方法を決め、必要事項を入力していきましょう。画面の指示に従い、順を追って入力していくだけなので、初心者でもそれほど難しくはありません。
給与や経費、所得控除も入力していくので、必要な書類は手元に置いておくと慌てずに済みます。
- 税務署へ郵送
- 税務署窓口へ持参
- e-Tax(電子申請)
自宅に居ながら確定申告書を提出するなら、e-Tax(電子申請)の利用が便利です。用紙を印刷する手間や、郵便局や税務署に行く手間がかかりません。
郵送や窓口へ持参する場合は、用紙を印刷して揃えておく必要があります。郵送する際には、必ず期限内に税務署へ届くよう余裕を持って送ってください。
また確定申告時の窓口は混雑するので、時間に余裕のあるタイミングで窓口に行くようにしましょう。
確定申告が終わったら、実際に所得税を納税しましょう。
所得税の納税は、以下の方法でおこなえます。
- 銀行振り込み
- インターネット上の支払い
- クレジットカード
- コンビニでのQRコード決済
- 金融機関や税務署窓口での現金納付
海外FXの利益を確定申告する際の注意点
海外FXの利益を確定申告する際には、いくつか注意しなければならない点があります。思い違いで損をしてしまわないためにも、しっかり確認しておきましょう。
海外FXは繰越控除が使えない
海外FXの利益を確定申告する際に、繰越控除が使えないことを覚えておきましょう。
繰越控除とは、本年分に控除しきれなかった損失を、翌年以降に繰り越して利益から控除できる制度です。たとえば1年目に100万円の損失が出て、2年目に200万円の利益が出たら、2年目の利益から1年目の損失を引いて税金の計算ができます。
海外FXと国内FXは損益通算できない
海外FXと国内FXは、損益通算ができないのも注意したいポイントです。
損益通算とは、1年間に生じた利益と損失を相殺させることを意味しています。国内FXは他の所得と分けて課税される申告分離課税のため、海外FXと損益通算ができません。しかし複数の海外FXで取引している場合や、副業で雑所得を得ている場合は損益通算がおこなえます。
もし海外FXや他の副業で損益が出ている場合は、どの利益と相殺できるか考えてみることをおすすめします。
サラリーマンが会社にバレずに海外FXの確定申告をする方法
サラリーマンが、会社にバレずに海外FXの確定申告をするにはコツがあります。会社にバレずに確定申告をしたいなら、住民税の徴収方法で「普通徴収」を選びましょう。
「特別徴収」を選択すると、給与とFXの利益に対する住民税が会社に通知されてしまうため、バレてしまう可能性があります。不安な場合は、確定申告時に窓口の人に確認してみるとよいでしょう。
ちなみに、マイナンバーカードが原因となって会社にバレることはないので安心してください。
まとめ
海外FXの税金が高いといわれるのは、利益が多いほど税率が上がる「累進課税方式」だからです。国内FXより税金が高いといわれていますが、海外FXの利益が195万円以下の場合は、国内FXよりも低い税率が適用されます。海外FXで利益が出た場合は、所得控除などの適切な控除を利用し、上手に節税してください。
確定申告時に、住民税の徴収方法で「普通徴収」を選べば、サラリーマンでも会社にバレる心配はありません。